【小説】内緒だよ…?

はじめにお読みください。





「やだ!!」

「やだって言われても…」

「お姉ちゃんと一緒がいいの!!」

「どうしても外せないんだってば!!」

明日はお姉ちゃんが1日、家に居ないようです。

メルちゃんはとっても慌てています。

「め、メルはどうしたらいいの!!」

「ごはん作れないよ?」

「お腹がすいてしんじゃう!!」

「大丈夫だよ、明日はね…」

翌日。

メルちゃんはお姉ちゃんの友達の家に1日預けられることになりました。

ものすごく不機嫌そうな顔をしています。

「…ごめんね、メルちゃんのことお願いね」

「えへへ、大丈夫だよ~」

「…」

「もう、メルちゃん挨拶した?」

「…」

「緊張してるのかね…全く」

お姉ちゃんが手を振ると、メルちゃんもしぶしぶ手を振り返しました。

「…1日ぐらい大丈夫だよね」

「サークルの旅行とはいえ…さすがにメルちゃんを連れて行くわけには」

「これが彼氏との旅行だったらなぁ~」

「一体、いつになったら出来ることやら」

「私は永遠に、あのちっちゃいうさぎさんと暮らすことになるのかね」

ぼそぼそつぶやきながらタクシーに乗りました。

一方のメルちゃんは…

「お姉ちゃん行っちゃったね」

「…」

「あの…大丈夫?」

「もしかして…私のこと怖い?」

「…」

「あ、お名前聞いたけど忘れちゃった…もう一回教えて欲しいな」

「…メル」

「じゃあ、メルちゃんって呼ぶね」

「私はリリって言うの」

「よろしくね、メルちゃん」

「…」

メルちゃんはよほど不機嫌なのか、何も喋りません。

リリは困ってしまいました。

「(えー、どうしようどうしよう)」

「(メルちゃん怒ってるのかなあ、ちっちゃい子のお世話なんてしたことないよう)」

「(…じ、ジュースでも飲ませてみるかな)」

「メルちゃん、暑いからお家に入ろっか」

「…うん」

リリは画家志望の大学生です。

部屋には色んな画材が散らかっていました。

他にも、タロットや占い石など不思議なものがいっぱい置いてあります。

「ごめんね、お家が散らかってて」

「ジュース持ってくるから待っててね」

リリが台所に行くと、メルちゃんは部屋を物色し始めました。

真っ先に目に入ってきたのは小さな箱に入っている色鉛筆でした。

綺麗に並んでいて、まるで虹のように見えます。

思わず手に取ろうとした瞬間、リリが戻ってきました。

メルちゃんは急いで元の場所に戻りました。

「おまたせ~」

「あれ、どうしたの?」

「…なんでもない」

「そう?」

「はい、オレンジジュースだよ」

「おかわりが欲しかったら言ってね」

メルちゃんがオレンジジュースを勢い良く飲み干しました。

ちょっとだけ機嫌が良くなったのでしょうか、メルちゃんは何か喋りたそうにしています。

「…」

「メルちゃん、私のこと嫌い?」

「なにか怖いことしちゃった?」

「…メルね」

「ん?」

「お姉ちゃんと一緒がよかった」

「そうだよね、でも今日はどうしてもね…」

「1日だけだから、我慢してね…」

リリが申し訳無さそうに言うと、メルちゃんは先程の色鉛筆を指さしました。

「あれ」

「…あれって…どれかな?」

「色鉛筆つかいたい」

「わ、メルちゃんお絵描きしたいのかな」

「持ってくるから待っててね」

リリが色鉛筆と画用紙を持ってくると、メルちゃんは早速お絵描きし始めました。

「メルちゃん、何描いてるのかな?」

「オムライスだよ」

「…へえ」

メルちゃんが描いている絵を見て、リリが何か言いたそうにしています。

一方のメルちゃんは真剣な様子です。

「できた!!」

「お姉ちゃ…」

メルちゃんが『お姉ちゃん』と言いかけて口をつぐみました。

なんだか恥ずかしそうにしています。

「…」

「お姉ちゃんいないんだった」

「くすっ、メルちゃんお絵描き出来たかな?」

「うん」

画用紙に描かれていたのは、お世辞にも上手とは言えないオムライスの絵です。

それを見て、リリが我慢出来ずに言いました。

「メルちゃん、私ね…画家を目指してるの」

「がか?」

「うん、絵描きさんだよ」

「だから、メルちゃんにちょっとならコツを教えられるかも」

「…え、ほんとう?」

「うん、一緒に描いてみよっか?」

「やった!!」

メルちゃんが今日一番の笑顔を見せてくれました。

リリはやっと安心しました。

「じゃあね、まず…」

線画の描き方、配色、配置など…

メルちゃんにお絵かきの基本を優しく教えてあげました。

そして…

「できた!!」

「おね…」

メルちゃんがまたしても『お姉ちゃん』と言いかけて口をつぐみました。

とっても恥ずかしそうにしています。

「り…りりさん、出来たよ!」

「えへへ、なんだかくすぐったいなぁ」

「リリって呼んでね」

初めのオムライスとは比べ物にならないぐらい上手に描けました。

メルちゃんはお絵描きの才能があるのでしょうか。

二人はすっかり仲良しです。

「りりはなんでお絵描きさんになりたいの?」

「ん、絵を描くのが好きだからだよ」

「絵を描いているとね、日常の嫌なこととか…綺麗さっぱり忘れられるの」

「嫌なことってなあに?」

「え、それは…」
「メルもね、嫌なことあるよ」

「あ、教えてくれるの?」

「病院行くの嫌なの」

「あはは…それはみんな嫌かも」

メルちゃんはリリのことが好きになったみたいです。

リリはメルちゃんの様子を見て一安心しました。

しばらくして、時計が12時を告げました。

「メルちゃん、お腹すいたかな」

「うん!」

「何か食べたいものある?」

「えー、思いつかないなあ」

「ちょっとお出かけしよっか」

「やった!!」

二人は歩いてすぐの喫茶店に行きました。

店に入るとすぐ、リリの馴染みの店員さんがやってきました。

「あ、久しぶり!!」

「やっほー」

「どう、元気にしてた?」

「うん、そっちはどう?」

「あたしはもちろん…って、あれ」

「その子どうしたの?」

「あ…ちょっと訳ありでね」

「可愛いうさぎさんだね、名前はなあに?」

「メルだよ!!」

「メルちゃんって言うんだね、こっちにおいでね」

二人は奥の席に座りました。

店内にはお洒落なBGMが流れていて、メルちゃんは興味津々です。

しばらくして、店員さんがメニューを持ってきました。

「はい、決まったら呼んでね」

「あ…お子様ランチはやってないんだ、ごめんねメルちゃん」

「メル子供じゃないもん」

「あはは、そっかそっか」

「ち、ちょっと!!」

リリが焦った様子でメルちゃんをなだめます。

店員さんが戻っていくと、メルちゃんが小さい声で言いました。

「…お子様ランチないの?」

「ん、どうしたの?」

「…なんでもない」

迷った結果、二人はミートソーススパゲッティを食べることにしました。

メルちゃんはミニサイズです。

しばらくして、料理が運ばれてきました。

「はい、おまたせしました」

とってもいい匂いがしています。

メルちゃんが目を輝かせています。

「りり、食べてもいい?」

「うん、いっぱい食べてね~」

「いただきます!!」

「あ、お洋服に付かないようにしてね」

メルちゃんが美味しそうにスパゲッティを食べるのを見て、リリは嬉しくなりました。

「メルちゃんおいしい?」

「おいしい!!」

「良かった」

「私ね、ここの喫茶店昔から通ってるんだ」

「そうなんだ!!」

「全部美味しいけど…特に好きなのはミートソーススパゲッティなの」

「メルちゃん喜んでくれて嬉しいな」

「メルまた来たい!!」

「あ、じゃあ今度は三人で来る?」

「うん!!」

スパゲッティを食べ終わると、メルちゃんがお腹をさすりました。

「お腹いっぱいになった」

「えへへ、それは良かったね」

「…さーて」

「メルちゃん、これからどうする?」

「んー」

特に思いつかないので、二人はとりあえず喫茶店を出ました。

時刻は二時です。

「あ」

「どうしたの?」

「私ね、用事を思い出しちゃった」

「なになに?」

「白の絵の具が切れちゃったの」

「りりは絵の具も使えるんだね!」

「絵の具が一番得意かな?」

画材店に行くとすぐ、リリは絵の具を物色し始めました。

メルちゃんはとっても暇そうです。

「りり、決まった?」

「…」

リリは真剣な眼差しで画材を選んでいます。

メルちゃんはふと、すぐ隣の色鉛筆コーナーに目が行きました。

色鮮やかに色鉛筆が陳列されています。

「メルちゃんおまたせ…あれ?」

メルちゃんが色鉛筆の入った箱を持ってリリを見つめています。



『お姉ちゃん、新しい色鉛筆がほしい』

『え、まだあるじゃん』

『だって10色しか入ってないもん』

『使い切ったら買ってあげるね』

『え~~』



先日、お姉ちゃんとこんな会話をしていました。

メルちゃんの手には『和の色10色セット』と書かれた箱が。

リリは笑ってしまいました。

「あ、メルちゃんこれ買ってほしいんだ?」

「だめ?」

「勝手に買ったら…私きっと怒られちゃうな~」

「え…」

「なーんて、ね」

「さっきお家でね、メルちゃんとっても楽しそうにお絵描きしてたよね」

「メルちゃんなら、使いこなせると思うんだ」

「じゃあ…買ってくれるの?」

「えへへ、特別だよ」

「やった!!」

「りり大好き!!」

「そ、そんな嬉しいこと言われたの久しぶりだな~」

リリは絵の具を数点買いました。

メルちゃんは大切そうに色鉛筆の箱を抱いています。

「ねえねえ、お絵描きしたい!!」

「私もね、新しい色試してみたいんだ」

「ちょっと疲れたし…お家に帰ろっか?」

「うん!!」

リリの家に帰ると、二人はさっそくお絵描きし始めました。

メルちゃんはさっき食べたスパゲッティを描いているようです。

「くすっ、メルちゃん食いしんぼうなのかな?」

「おいしいもの大好きだよ?」

「りりは何描いてるの?」

「秘密だよ」

「えー、教えて欲しいなぁ」

「もう少しで分かるよ…はい、出来た!!」

リリが描いていたのは、メルちゃんの絵でした。

画家志望とだけあり、さすがの腕です。

メルちゃんは大喜びです。

「わぁ、メルだ!!」

「すごいすごい!!」

「そんなに上手かな?」

「りり絶対お絵描きさんになれるよ!!」

「えへへ…ありがとね」

「メルちゃんも上手じゃん、すごいね~」

「りりが教えてくれたからだよ!」

「うんうん、ここをこうするとね…」

リリのお絵かき講座が始まりました。

メルちゃんは真面目に取り組んでいます。

描いては捨てて、描いては捨てて…

気がつくとすっかり日が暮れています。

「りりの教え方上手だね!」

「メルちゃん飲み込みが早いから教えてて楽しいな~」

「また教えてほしいなぁ」

「次来たときは、続きをしようね」

突然、メルちゃんのお腹がなりました。

「あ」

「おや、お腹が鳴ったの…だーれだ?」

「メルお腹すいた」

「お腹すいたね、夜ご飯食べよっか」

「うん!」

ご飯を食べてお風呂に入って、普段ならメルちゃんはもう寝る時間です。

けれども、リリといるのが楽しくてしかたないようです。

「あの、メルちゃん?」

「なあに?」

「もう寝る時間だよ…?」

「メルもっと遊びたい!!」

「そ、そんなこと言われても…」

「ねえねえ、描いた絵見せて!!」

「んー、少しだけだよ?」

「見たら寝ようね」

「うん!!」

リリはしぶしぶメルちゃんに、これまで描いた絵を見せてあげました。

メルちゃんは興味津々です。

中でも興味を持ったのが、ホタルの絵でした。

メルちゃんはまだ、ホタルを見たことがないようです。

「りり、これなあに?」

「ん?」

「この黄色いやつ」

「これはね、ホタルって言うの」

「夜になるとぴかぴか光りだしてね、とっても綺麗なの」

「へぇ~」

「…メルちゃん、ホタル見たことない?」

「ないよ?」

過保護気味なお姉ちゃんは、暗くなってからあまりメルちゃんを外に出さないようにしています。

リリはそれを聞いて、ちょっとだけ気の毒に思いました。

「…ね、私いいこと思いついちゃった」

「なになに?」

「これからさ、ホタル見に行かない?」

「…こ、これから?」

メルちゃんがとたんに不安そうな顔をしました。

暗いのが怖いのです。

「…やだ」

「え、どうして?」

「暗いの怖い…おばけやだ…」

「大丈夫だよ、私と一緒だから」

「…ほんとに?」

「おばけが出たらね、私がやっつけちゃうんだから」

「…じゃあ、行く!」

メルちゃんの夜の探検が始まりました。

探検、と言っても歩いて10分ぐらいのスポットです。

リリの家が遠ざかるに連れて、メルちゃんの不安はどんどん大きくなって行きます。

月が雲に隠れており、あたりは真っ暗です。

メルちゃんはリリの手をぎゅっと握っています。

「手を離したらだめだからね?」

「分かってるよ、もう少しだからね」

「…はい、到着!」

「…わぁ」

そこには素敵な景色が広がっていました。

あたり一面にホタルが飛び交い、実に幻想的です。

メルちゃんは初めて見る光景に興奮気味です。

「すごいすごい!!」

「綺麗だね、やっぱり来て良かったな~」

「ねえ、なんでみんな光ってるの?」

「ん、それは…なんでだろうね~」

「お星さまのまねっこしてるのかな?」

「くすっ、それって素敵かも」

しばらくホタルを眺めてから、二人は帰りました。

メルちゃんは相変わらずリリの手を強く握っています。

「ただいま~」

「ただいま!!」

「家は涼しいね~」

「メルね、夜の探検楽しかった!!」

「え~、あれほど怖がってたの…誰だっけなぁ?」

「怖がってないもん!!」

「うふふ、メルちゃん頑張ったね」

「…あ」

時計は11時半を指しています。

こんな時間までメルちゃんが起きていたのを知られたらリリが怒られちゃいます。

リリは焦った様子で言いました。

「め、メルちゃん…あのね」

「なあに?」

「夜にホタルを見に行ったの…お姉ちゃんには内緒だよ」

「ないしょ?」

「うん」

「お姉ちゃんに言ったらだめなの?」

「だって、子供はこんな遅くまで起きてたらだめだからね」

「メル子供じゃないもん」

「…そうだね、メルちゃん夜の探検頑張れたもんね」

「うん」

「だから、内緒にしてて欲しいな~」

「メルちゃんはもうお姉さんだから、私との約束守れるよね」

「お姉さん…」

「そう、お姉さん」

「わかった!!」

メルちゃんはお姉さんと言われたのがとても嬉しかったようです。

いつもお姉ちゃんにからかわれてばっかりなので、なおさらです。

「ねえ、指切りげんまんってしよ?」

「そんなのするのって、久しぶりだなぁ」

「ねえねえ、いいでしょ?」

「うふふ、じゃあ行くよ…」

二人は指切りして、寝る準備をしました。

「…あ!」

「どうしたの?」

「メルちゃんの寝る場所が無い…」

「え、メルお外で寝るの?」

「いや、えーっと…どうしよう?」

「いつもはどうしてるの?」

「どうって、メルのお部屋で寝てるよ?」

「うーん、仕方ないかぁ」

「…?」

「メルちゃん今日は一緒に寝よっかぁ」

「いいよ!!」

子供じゃないもん!と言われるかと思いきや、意外と乗り気です。

リリのことがよほど好きになったのでしょうか。

二人は同じベッドに入りました。

「じゃ、メルちゃん…今日は楽しかったね」

「メルも楽しかった」

「おやすみ」

「おやすみ!」

疲れていたのか、メルちゃんはすぐに寝てしまいました。

一方、リリはぼーっと考え事をしています。

「メルちゃん、今日でおしまいかぁ」

「ちっちゃい子のお世話なんてしたことなかったけど…」

「結構楽しいもんだね」

「子供ってかわいいなぁ…はぁ…」

「…」

リリは気がつくと寝ていました。

静かな夜です。

「…ん」

しばらくして、メルちゃんが起きてしまいました。

「あれ、メルのおうちじゃない…」

「…お姉ちゃんは?」

どうやら、メルちゃんはお姉ちゃんと遊ぶ夢を見たようです。



『見てメルちゃん、てんとう虫だよ』

『わぁ、かわいい~』

『あ…飛んでいっちゃった』

『メルもお空を飛びたいな~』

『くすっ、メルちゃん可愛いね』

『あ、またメルのことばかにするんだ!』

『ちがいまーす』

『もう!!』



メルちゃんは急にお姉ちゃんが恋しくなりました。

リリはメルちゃんのことを馬鹿にしたりなんてしません。

一方のお姉ちゃんはメルちゃんのことをからかってばかりです。

でも、泣いていたら優しくなぐさめてくれます。

笑っていたら一緒に笑ってくれます。

そんなお姉ちゃんが大好きなのです。

「…お姉ちゃん」

「ん…メルちゃんどしたの」

リリもつられて起きてきました。

隣で寝ていたメルちゃんが起きているのに気づきました。

「…メルちゃん?」

メルちゃんは泣いていました。

「わ、どうしたの?」

「どこか痛いところがあるの?」

「メルね…おねえちゃんがいい…ぐすっ」

「…そっか、そうだよね」

「明日になったら会えるからね」

リリはメルちゃんを抱っこしてあげました。

ふわふわでいい匂いがしています。

「よしよし、いい子いい子」

「ほんとにもどってくる…?」

「大丈夫だよ、戻ってくるからね」

リリに抱っこしてもらって安心したのか、メルちゃんはそのまま寝てしまいました。

ベッドに寝かせてあげてから、メルちゃんを起こさないようにリリもそっと横になりました。

「…おねえちゃんがいい、か」

「寂しくて泣いちゃったのは内緒にしとくからね」

「あーあ…私がいいって言ってくれる人はいないのかなぁ」

翌日、メルちゃんを迎えにお姉ちゃんがやって来ました。

お姉ちゃんを見た瞬間、メルちゃんは走り寄って無言で抱きつきました。

「わ、どうしたの?」

「…」

「メルちゃんね、ちょっぴりさみしかったみたい」

「ふーん、リリに悪いことされなかった?」

「もう!」

「可愛いメルちゃんにそんなことしませんよーだ」

「…メルね」

「ん?」

「とっても楽しかった」

「よかったね…また来たい?」

「うん!!」

メルちゃんはリリにばいばいしました。

すると…

「あ、メルちゃん」

「なあに?」

「ちょっと来てくれるかな?」

メルちゃんが来ると、ひそひそ声で話しかけました。

「昨日の探検は、内緒だよ」

「うん!」

メルちゃんがお姉ちゃんのもとに戻りました。

「なんの話してたの?」

「なにも?」

「え~、怪しいなぁ?」

メルちゃんが帰っていきました。

リリはちょっと寂しそうです。

「…メルちゃんまた会おうね」

「さーて、私も頑張らなきゃ」

翌日、メルちゃんは学校でお絵描きしました。

「えへへ、上手に描けたねって褒められちゃった」

「リリのおかげ!」

「また会いたいな~」

お姉ちゃんが帰ってきました。

メルちゃんはとても嬉しそうにお姉ちゃんを見ています。

「ただいま~」

「おかえり!!」

「どしたの、いつもの100倍ぐらい元気じゃん」

「これ以上元気になられると困っちゃうな~」

「あのね、今日ね、学校でお絵かきしたの」

「うんうん」

「あ、見せてくれるの?」

「じゃーん!!」

絵を見て、お姉ちゃんは驚きました。

メルちゃんにしてはとても上手に描けています。

「…え!!」

「ねえねえ、上手でしょ?」

「ホタルの絵じゃん!」

「…あ!!」

メルちゃんはドキッとしました。

リリとの約束を破ってしまったかもしれません。

しかし、今更見せたものをなかったことにはできません。

「メルちゃんホタル見たことあるっけ!?」

「え、えっとね…あのね…」

「ん~?」

「こ、これはホタルじゃなくてお星さまなの!!」

「星ぃ…?」

メルちゃんは明らかに動揺しています。

「…ま、いいか」

「今度ホタル見に行く?」

「え」

「夜遅いけど…たまにならいいかなって」

人生二回目のホタルですが、初めてを装わなければなりません。

「や、やった~」

「…メルちゃんなんかぎこちないね」

「そ…そんなことないもん!!」

「行きたい行きたい!」

「じゃ、今週末に…天気が良かったらね」

「うん!!」

その日の夜、リリは一人でぼーっとしていました。

メルちゃんが可愛くてしょうがなかったようです。

「なんか寂しいなぁ…」

「メルちゃんこっちに住んでくれないかなぁ」

ふと、壁に飾ってあるメルちゃんの絵に目が行きました。

リリが自分で描いた絵を飾るのは珍しいのですが、お気に入りの絵なのです。

そこにはメルちゃんが夢中で絵を描いている様子が描かれています。

「んー、メルちゃんお絵かきするの嬉しそうだったな」

「私も負けないように、頑張ろっと」

ふと、箱の中の色鉛筆が散らかっているのに気が付きました。

「もう、メルちゃんお片付けしないとだめだよ?」

「また今度一緒にお絵かきしようね」

散らかった色鉛筆を揃えてると、ピンク色だけ短くなっているのに気づきました。

メルちゃんが好んで使っていた色です。

リリはピンクの色鉛筆をそっと手に取りました。

「…メルちゃん」

リリが泣いてしまったのは、内緒です。

おしまい

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