【小説】ひこうき雲

はじめにお読み下さい。




※今回かなりやばい設定です。
以下を読んだ上で了承出来る方のみ先に進んで下さい。


・メルちゃんがかなり低年齢化(喋れるようになった幼児ぐらい?)




今日は晴れ。
空には実に色々な形の雲が浮いています。
時間が立つにつれ徐々に形を変える雲。
メルちゃんはそんな雲を見るのが大好きです。
お天気の日はいつもお姉ちゃんと一緒に空を見上げています。

メルちゃんは朝ごはんを食べたあと、ぼーっとテレビを見ていました。
ちっちゃいくせに教育番組はお気に召さないようで、他のチャンネルを見ています。

『今日の天気をお伝えします…』

「あ、今日はいい天気だって」
「え!!」
「メルちゃん、ちょっと外に出てみる?」
「いく!!」

お姉ちゃんはさっそくお出かけの準備をしています。
メルちゃんはというと…

「あ!ひとりで出ちゃだめ!!」
「わ!!」
「もう、準備するから待っててよ~」
「…子供は良いよなぁ、大人が色々してくれるんだからさ」
「えーっと、水筒に氷入れて…おやつは…」

メルちゃんはよほど楽しみなようです。
というのも、ここ数日雨が続いたせいで外に出られなかったのです。
メルちゃんは雨が怖いようで、天気の悪い日は一歩も出たがりません。
この前なんて、台風の日に叩きつけるような雨音を聞いて大泣きしてしまいました。

「さて、これでいいかな…あ!!」
「水筒が氷だけじゃん、あっぶな」
「メルちゃんは…これでいいかな」

水筒にメルちゃんの大好きなりんごジュースを入れてさあ出発です。

「メルちゃんいい天気だね」
「…あ、ちゃんとおてて繋いでね」

好奇心旺盛なお年頃で、ちょっとでも手を離すとすぐどこかに走って行ってしまいます。

「あ、絆創膏持ってきてないかも」
「コケたらどうしよう…」
「…あ!!そういえば虫除けスプレーしてないじゃん」

お姉ちゃんはちょっと過保護気味なようです。
一方のメルちゃんはそんなのお構いなしで上機嫌です。
スキップしてみたり突然走り出そうとしてみたり、お姉ちゃんは心配でなりません。

ゆっくりと10分ほど歩いて、いつもの公園に到着しました。
人はまばらで、のんびりするにはもってこいです。

「メルちゃん、着いたよ~」
「あそこ!!」
「はいはい、あそこね」

メルちゃんにはお気に入りの場所があります。
ちょっとだけ木が茂っていて、その下にベンチが設置してあります。
そこにお姉ちゃんと並んで座るのが大好きなのです。
いつも誰も居ない、まるでここは二人だけの秘密の場所です。

「よいしょっと」

メルちゃんをベンチに座らせてあげるとさっそく、空を見上げました。

「今日は何が見えるかな~?」
「んー」

空にはいろんな形の雲が浮かんでいました。
まんまるのお月さまみたいな雲があれば、細長い鉛筆みたいな雲もあります。
メルちゃんの目に留まったのは…

「あれ!!」
「ん?どれかな…」

指さしたのは、ドーナツみたいに真ん中に穴の空いた雲でした。
メルちゃんはお菓子が大好きです。
もしかして、そんな形の雲を探すのが好きなのでしょうか。

「どーなつ!!」
「あはは、メルちゃん食いしん坊だね」
「あれとってきて!!」
「え~?雲は取ってこれないなぁ~」

しばらく雲探しをしていると、メルちゃんがお姉ちゃんのかばんをつついてきました。

「ん、どうしたの?」
「のむ!!」
「あぁ、はいはい…ちょっと待ってね」

ストロー付きの水筒を出してメルちゃんに手渡しました。

「おいしい?」
「ごくごく…」
「おいしいってことね、りんごジュース好きだもんね」

満足したのか、メルちゃんは水筒を渡してきました。

「ありがと!!」
「お、よく言えたね~えらいえらい」

メルちゃんの頭を撫でてあげるとにこっと笑いました。
そんなメルちゃんを見てお姉ちゃんも自然と笑顔になりました。

「さて、メルちゃん何しよっか」
「…ん、どこ行くの?」

雲探しに飽きたようで、メルちゃんが歩き出しました。
メルちゃんが向かったのは落ち葉の山です。

「あ、落ち葉がいっぱいだね」
「はっぱ!!」

お姉ちゃんが手を離すと、メルちゃんは落ち葉の上を歩き出しました。
かさかさと音を立てて歩くのが楽しいようです。

「子供はいいよなぁ、楽しみがいっぱいで」
「私がちっちゃい頃って何してたっけなぁ」
「昔に戻りたいなぁ、あーあ…」
「あーあ…」
「…」

ぼーっと物思いにふけっていると、メルちゃんが何かを持って来ました。

「みて!!」

持ってきたのは、綺麗な赤色をした葉っぱです。
ちょっと虫食いの穴が空いていますが、メルちゃんにはそんなのお構いなしです。

「わ、綺麗…よく見つけたね~」
「あげる」
「え、くれるの?」
「うん!!」
「えへへ、ありがとね」
「…あ、そうだ」

お姉ちゃんはかばんから文庫本を取り出して、葉っぱをはさみました。
メルちゃんが遊んでいる間に読もうと持ってきた文庫本ですが、こんな形で役に立つとは思いもしませんでした。

公園に来て一時間ほど経ちました。
メルちゃんはちょっと疲れたようです。

「だっこ」
「ん、いいよ」

メルちゃんをだっこして、なんとなく遊具のところまで行きました。

「メルちゃんにはちょっとまだ早いよねぇ」
「落ちでもしたら…だめだめ、絶対まだ早い」
「あれかな、キャッチボールとかバドミントンとかしたら楽しいのかな」
「将来のお楽しみってやつ?」

ふとメルちゃんを見ると、眠そうな目をしていました。

「あ、メルちゃんねんねしていいからね」
「んー…」
「いい子いい子」

先程の木陰のベンチに戻ってきました。
メルちゃんは腕の中ですやすや眠っています。

「よいしょっと」

メルちゃんを起こさないようにゆっくりとベンチに座りました。
いかにも幸せそうな顔で寝ています。
一体、どんな夢を見ているのでしょうか。

「はぁ、ちっちゃい子供は可愛いなぁ」
「ずっとこのままで居てほしいな…なーんて」
「うそうそ、成長を見届けたかったりして」
「大きくなって独り立ちして…」
「うーん、やっぱりずっと一緒にいたいからこのままで良かったりして…」
「…あ」

空に一筋のひこうき雲を見つけました。
まるで流れ星のようです。

「あーあ」
「流れ星だったらな、願い事なんて決まってるのにな」

お姉ちゃんはメルちゃんの顔を見ました。
相変わらずすやすやと寝ています。

「もう、メルちゃんよだれでてるし」

ハンカチで拭いてあげると、なぜだか急に悲しくなってきました。
抱いた腕の中からメルちゃんがぱっと消えてしまいそうな気がしたのです。
思わずお姉ちゃんはメルちゃんをぎゅっと抱きしめました。

「…そうだ」

お姉ちゃんは空を見上げました。
時間が経って、ひこうき雲がかすれかけています。

「…メルちゃんと、ずっと一緒にいられますように」

腕の中で寝ていたメルちゃんがふと、ほほえみました。

おしまい

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