【小説】キティちゃんのアップルパイの続編になります。
「やったぁ、晴れてる!!」
キティちゃんはカーテンを開けるとすぐ、思わず声に出してしまいました。
この前メルちゃんと一緒にアップルパイを作った時に、こんな約束をしていました。
『今度二人で一緒に海に行かない?』
『わぁ、キティね…まだ海に行ったことないの』
『じゃあ、来週晴れてたらにしない?』
『うふふ、楽しみ!!』
どれほどこの日を待ちわびたことでしょうか。
キティちゃんは昨日吊るしたてるてる坊主を手に取りました。
「てるてる坊主さんありがとう!!」
「キティいっぱい遊んでくるね」
キティちゃんはてるてる坊主をやさしく撫でてあげました。
準備を終えて家から出る直前にミミィに呼び止められました。
「あれ、どこ行くの?」
「!!」
キティちゃんはメルちゃんと二人だけが良いみたいです。
それに、ミミィちゃんにこっそり貝がらを持って帰ってあげたいのです。
朝早いので寝てるかと思ったので、キティちゃんは驚いています。
「えっと…その、お出かけだよ~」
「え~、ミミィも行きたい!!」
「き、今日はその…あの…」
ふと、ミミィちゃんがにやっと笑いました。
「…あ、分かった!!」
「な、なあに?」
「キティったら、男の子と遊んでくるんでしょ」
「うんうん、ミミィ分かってるから大丈夫だよ~」
「おっ、男の子…」
キティちゃんはなぜか顔が真っ赤になっています。
一方のミミィちゃんは意地悪そうな顔をしています。
「ミミィは居ないほうがいいよね~、キティったらいつの間にかお姉さんになっちゃって」
「ミミィはおうちで遊んでるね」
「あ!ちょっとミミィ!」
ミミィちゃんはそう言うと自分のお部屋に戻ってしまいました。
「…」
「あ!!もうこんな時間!!」
「走らないと遅れちゃうかも…」
「もう~、ミミィのせいだからね!!」
キティちゃんは急いで約束の場所に向かいました。
「…キティちゃん来ないなあ」
「どうしたのかな」
「…もしかしてメルとの約束忘れてたりして!!」
待てど暮らせどキティちゃんが来る気配がありません。
メルちゃんはだんだん不安になってきました。
「どうしたのかな、具合が悪くなったのかな」
「それとも…」
その直後、キティちゃんが走って来るのが見えました。
「あ!キティちゃんだ!!」
「はぁ、はぁ…」
「ごめんね、遅れちゃった」
「どうしたの?キティちゃんが遅れるなんて珍しいね」
「えっとね、その…ミミィにね」
キティちゃんは、今朝のミミィちゃんとの会話をメルちゃんに説明しました。
「あはは、ミミィちゃんったらいじわるなんだね」
「もう、ミミィに内緒でお出かけしたかったのに」
「…じゃあ、そろそろ行こっか?」
「うん!!」
二人は海の方へ向かいました。
雲一つない快晴で、お出かけにはぴったりです。
メルちゃんとキティちゃんそれぞれがリュックを背負っています。
中には何が入っているのでしょうか。
「ねえ、まだ着かないの?」
「キティちゃんって海に行ったことないんだよね」
「うん、多分ミミィも行ったことないと思うよ」
「そうなんだ、メルはいっぱい行ったことあるんだ~」
「ねえねえ、どれくらい楽しみ?」
「キティね…今日が楽しみすぎて昨日は寝られなかったの」
そういうとキティちゃんはあくびをしました。
メルちゃんは思わず笑ってしまいました。
「…あ、そろそろ見えてくるよ」
しばらく歩くと、海が見えてきました。
キティちゃんは大興奮です。
「わぁ、すごいすごい!!」
「あの青いのが全部海なの?」
「そうだよ、おっきいでしょ~」
「ねえねえ、早く行こうよ!!」
「あ、待ってよ!!」
キティちゃんは海に向かって夢中で走り出しました。
メルちゃんもキティちゃんに付いて走っていきました。
「到着!!」
「くんくん…なんだか不思議なにおいがするね」
「これはね、潮の香りって言うんだよ」
「そうなんだ~」
「でね、今キティちゃんが踏んでるのが砂浜だよ」
「ざらざらしてるね、持って帰りたいな~」
「ちょっとだけなら良いんじゃないかな?」
二人は遊ぶ前にちょっと休憩することにしました。
日陰になっている所があったので、そこに並んで座りました。
「すごいなぁ、おっきいなぁ~」
「メルちゃんは泳げるの?」
「メルね、泳ぐのは苦手なの…」
「そっか、キティもね…あんまり得意じゃないの」
ちょっとしょんぼりしたキティちゃんにメルちゃんが言いました。
「えへへ、でもね…泳がなくても遊べるから大丈夫」
「そういえば、海ってどんな味がするの?」
「しょっぱいのは知ってるけど、どれぐらいしょっぱいのかな?」
「じゃあ、ちょっとだけ舐めてみる?」
「うん!!」
二人はリュックを置いて海辺に来ました。
寄せては返す波を見ていると、不思議と心が落ち着くのを感じます。
キティちゃんは波が来たタイミングでちょっとだけ手をつけてみました。
「わぁ…」
「どう?」
「冷たいね」
キティちゃんはぺろっと海水を舐めてみました。
すると、普通の塩水とは違うような不思議な味が口の中に広がりました。
「なんだか不思議な味がするね」
「ミミィもいつか連れてこなくっちゃ」
「今度は3人で来る?」
「あ、それいいかも!!」
キティちゃんはとっても嬉しそうです。
しばらくすると12時のチャイムが鳴りました。
「あれ、もうお昼なの?」
「メルお腹すいたかも」
「キティも…」
「じゃあ、お昼ごはん食べよっか」
「うん!!」
先ほどの日陰に戻って並んで座りました。
キティちゃんはおにぎりを、メルちゃんはパンをそれぞれのリュックから取り出しました。
「あ、メルちゃんそのパン美味しそうだね」
「キティちゃんのおにぎりもすっごく美味しそう」
「そうだ、はんぶんこしない?」
「いいの?」
「はい…どうぞ」
二人は仲良く半分になったおにぎりとパンを食べました。
ふと、キティちゃんが辺りを見回しました。
楽しそうに泳ぐ子供や、浜辺で寝っ転がってる人。
みんなとても楽しそうに見えます。
「ねえ、キティちゃんこれから何したい?」
「えっとね、貝がらを拾うのと…砂のお城を作るのと…」
「キティね、どっちも絵本で読んだことしかないの」
「あ、じゃあ…砂のお城作ろうよ」
「貝がらを拾うのは最後のお楽しみ!!」
「うふふ、キティすっごく楽しみ!!」
キティちゃんはスコップを持ってきてなかったので、メルちゃんのスコップだけでお城を作ることに。
「どんなお城がいいかな?」
「おっきいのは難しそうだから…これぐらいの大きさはどう?」
メルちゃんは両手でスイカぐらいの大きさのジェスチャーをしました。
「うんうん、そうしよっか!!」
「じゃあ、メルが砂を持ってくるから…キティちゃんはお城を作ってくれる?」
「わかった!!」
二人とも真剣にお城作りを始めました。
砂を運び終えてから、メルちゃんもお城作りに参加しました。
「ここをこうして…」
「できた!!」
ちょっといびつですが、砂のお城の完成です。
てっぺんには落ちていた枝が刺さっています。
「二人で作ったお城…持って帰りたいなぁ」
「あはは、キティちゃんもしかしてミミィちゃんに見せてあげたいの?」
「うん…でも無理だよね」
「また今度みんなで来ようよ」
「その時は、今日よりもっと大きいお城を作ろうね」
「うふふ、楽しみ!!」
楽しい時間はあっという間。
まだ夕暮れではありませんが、ちょっとだけ薄暗くなってきたように思います。
「メルちゃん、貝がら拾おうよ」
「競争する?」
「どっちがいっぱい拾えるかな」
「いいよ、キティ負けないもん」
「メルも負けないもん!!」
貝がら拾いが始まりました。
メルちゃんとキティちゃんは別々の場所で探すことに。
二人とも、危ない場所には行かないようにしています。
キティちゃんは砂浜に目を凝らしています。
けれども、なかなか見つかりません。
「ん~、貝がらってなかなか落ちてないのかなあ?」
「これじゃあ、ミミィに見せてあげられない…」
一方のメルちゃんはと言うと…
「わぁ、すごい!!」
「貝がらがたくさん落ちてる!!」
「あ、あそこにも!!」
「やったぁ、キティちゃんに自慢しちゃおっと」
しばらくして、二人はもとの場所に戻ってきました。
メルちゃんはとても嬉しそうにしています。
「見て見て!!」
「メルね、こんなに見つけたよ!!」
手に収まらないくらいたくさんの貝がらを持っています。
一方のキティちゃんは…
「…ひとつも落ちてなかった」
「え」
キティちゃんはしょんぼりしています。
どうやら探す場所が良くなかったみたいです。
今にも泣いてしまいそう、といった様子です。
すると…
「はい、どうぞ」
メルちゃんはキティちゃんに持っていた貝がらを全部渡しました。
「え?」
「メルね、おうちにいっぱいあるから大丈夫!!」
「キティちゃんが持って帰って、おうちの人に見せてあげて欲しいな」
しょげていたキティちゃんは笑いました。
「…ありがとう!!」
「キティ大切にするね」
「ミミィちゃんにも分けてあげてね」
「うん!!」
気がつくと夕暮れ時になっていました。
太陽が海に沈みかけています。
「…キティね、こんなに綺麗な夕焼け見たこと無いな」
「ねえキティちゃん、また会えるよね?」
「え?」
メルちゃんはなぜか悲しそうにしています。
「メルね、夕焼けを見るとなんだか悲しくなるの」
「このまま真っ暗になって…突然メルだけになったりしないかなって」
「たまに怖くなるの…」
キティちゃんはメルちゃんの手を取りました。
「もう、メルちゃんらしくないよ?」
「元気いっぱいなメルちゃんはどこに行ったの!!」
「え…」
「暗くなったら、お星さまとお月さまがキティ達のことを見てくれてるから大丈夫!!」
「メルちゃん一人になんてならないよ」
「…うん!!」
真っ暗になる前に、二人は早めに帰ることにしました。
「メルちゃん、今日はありがとう」
「キティちゃんも来てくれてありがとう」
「今度はミミィも連れてきて良い?」
「もちろん!!」
二人は手を振ってから、それぞれの帰路に付きました。
「ただいま!!」
キティちゃんが言うと、ミミィが真っ先に出迎えました。
「あ、おかえり!!」
「ねえねえ、デートはどうだった?」
ミミィは相変わらず意地悪そうな顔をしています。
「もう、違うって言ってるのに」
「そうだ、ミミィに見せたいものがあるから…寝る前にしようかな?」
「今じゃダメなの?」
「後のお楽しみ!!」
ママの作ったご飯を食べて、お風呂に入って…あっという間に寝る時間になりました。
キティちゃんは遊び疲れてとても眠そうです。
ミミィちゃんはさっきキティちゃんが言っていた物が楽しみといった様子です。
「キティ、見せたいものってなあに?」
「じゃーん!!」
キティちゃんはメルちゃんに譲ってもらった貝がらを机の上に広げました。
鮮やかな色をした巻き貝や、少し割れているけど大きな貝がら…。
様々な種類の貝がらがミミィちゃんの目に飛び込んできました。
「これ…貝がら?」
「そうだよ!!」
「すごい!!」
「キティもしかして海に行ってきたの?」
「えへん、メルちゃんと一緒にね」
「え~、なんでミミィも連れて行ってくれないの?」
「貝がらを見せて、ミミィを驚かせたかったからだよ」
ミミィちゃんは興味津々です。
中でもひときわミミィちゃんの興味を引いたのは真っ赤な貝がらでした。
「…ねえ、ミミィこれ欲しい」
「え?」
「だめだよね、キティの宝物だもんね」
「ううん、いいよ」
「…実はね、これ全部メルちゃんが拾ったやつなの」
「そうなの?」
「キティ探すのが下手っぴで一つも見つからなかったの」
「でね、今度は三人で行かない?」
ミミィちゃんの顔がぱぁっと明るくなりました。
「いいの?やったぁ!!」
「うふふ、キティも楽しみ!!」
「…そろそろ寝よっか」
「キティね、いっぱい遊んで疲れたの」
「じゃあ、お休み…キティ」
「ミミィもね」
その頃、メルちゃんは…
「キティちゃん楽しそうだったなぁ」
「ミミィちゃんと三人で行くのもすっごく楽しみ!!」
「…疲れたからもう寝ようかな?」
実は1個だけ、キティちゃんに渡さず持っていた貝がらがあります。
2つ同じ柄の貝がらを見つけたので、こっそり片方隠していたのです。
「えへへ、キティちゃんとお揃いだね」
「ミミィちゃんが持ってるかも?」
「…ふあぁ」
「おやすみ、みんな」
満月が綺麗な夜でした。
おしまい
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