【小説】伝説のウニ

初めにこちらをお読み下さい。

 

https://mellpatterns.info/novel-introduction/



本小説はアンケートフォームに投稿されたものをもとに書きました。
投稿ありがとうございました。

登場人物の紹介です。

メルちゃん
みんな大好き小さなうさぎの女の子。

お姉ちゃん
アンケートフォームに「お姉ちゃん=私(アンケート回答者)」との指示がありましたので、今回はそれっぽく書いてみます

おじさん
お姉ちゃんの知り合いの、船乗りおじさん。

ニィナ

誕生日:3月2日
北欧からやってきたドラゴンの女の子。
メルとポコのひみつのタマゴから生まれたばかり。
ちょっぴりわがままだけど、純粋で怖いもの知らず。

サンリオ公式サイトより引用
口癖は「~でちゅ」です。
※参考:ウィッシュミーメル過去のブログより


「じゃ、行ってきます」
「気をつけてね!」

お姉ちゃんはそう言うと一人で家を出ていきました。
行き先と用事は特に聞いていなかったのですが、メルちゃんはなぜかわくわくしています。

「えへへ」
「お姉ちゃんいないから、なにしても大丈夫だよね」
「さて、準備しよっと」

実はこの日、メルちゃんはとある夢を見ていました。
『伝説のウニ』というものが居て、それを獲りに行く…というなんともおかしな夢です。
しかし夢の中でメルちゃんはとっても興奮気味でわくわくしていたのです。

「…ウニってどこでとれるのかなあ」
「というかウニってどんなのだったっけ」
「えーっと」

メルちゃんは本棚から大百科を取り出してページをめくり始めました。
本を読むのは好きじゃないのに、このときだけは真剣な眼差しです。

「えーっと、う…う…」
「…あった!!」

そこにはウニの絵が載っていました。
メルちゃんは興奮気味に大百科を閉じると、急いで準備し始めました。

「ウニってあんなやつだった!」
「メルどこにあるか知ってるもんね」
「えーっと、あれはどこだったっけ」

なにやらごそごそと探しものをし始めました。

「あった」
「これがあれば大丈夫」
「名付けて…『メルのウニとり大作戦』!!」
「じゃあ、出発!!」

メルちゃんは走って家を出ていきました。

「はぁ、はぁ…」
「到着!!」

メルちゃんが来たのは…なんと森の中です。
しかも、持っているのは木の棒です。
本嫌いなメルちゃんが大百科の説明文なんて読むはずありません。
栗に似てるから、ウニも森にあるはずだ…そう思ったようです。

「この前お姉ちゃんとここで栗取りをしたんだ~」
「ウニも似てるからどこかにあるはず…」

ふと、メルちゃんが遠くに誰か居るのに気が付きました。

「…?」

よく見ると、メルちゃんのお友達のニィナでした。

「あ!ニィナだ!!」
「メルちゃんだ、こんにちはでちゅ」
「どうしてここにいるの?」
「アタチはお散歩しに来まちた」
「そうなんだ!」

「メルちゃんは?」

メルちゃんは持っていた木の棒を天に掲げると言いました。

「メルね、ウニを探しに来たんだよ」
「…え?」

ニィナはぽかんとしています。
それを見たメルちゃんは不思議に思いました。

「ニィナどうしたの、もしかしてウニのこと知らないとか?」
「…メルちゃんこそ、ウニのこと知らないんでちゅ?」
「そ、そんなことないもん」

メルちゃんは夢で見た『伝説のウニ』のことと、大百科を読んだことを話しました。

「…」
「メルちゃん、あのね…」
「あ!ニィナも手伝ってくれるの!?」
「ウニは多分…ここにはないでちゅ」

メルちゃんは驚きました。
目が丸くなっています。

「…えっ、えっ、森にあると思ったのに」
「メルちゃん、大百科はちゃんと読んだのでちゅか?」

メルちゃんはどきっとしました。

「よ…読んだよ?」
「…その大百科、大丈夫でちゅ?」
「えっとね、あのね、そのね…」

ニィナは笑いそうになるのをこらえています。
一方のメルちゃんは真剣に言いました。

「じゃ、じゃあニィナは知ってるの?」
「もちろんでちゅ」
「ウニはもちろん海にいるのでちゅ」
「う、海?」
「…メルちゃん大丈夫でちゅか?」

思わず、持っていた木の棒を落としかけました。

「そ、そうだった、思い出した!!」

ぎこちなくそう言うと、メルちゃんは森を出ようとしました。

「あ、アタチもついて行っていいでちゅか?」
「もしかして手伝ってくれるの?」
「いいでちゅよ、アタチも『でんせつのウニ』っていうのを見てみたいでちゅ」
「やった!!」

二人はいつも遊んでいる海岸に向いました。

「到着!!」
「ちょっと疲れたでちゅ…」

森から海岸はそこそこ離れています。
元気いっぱいなメルちゃんは久しぶりの海を見てわくわくしました。

「ん~、海の匂いがする!」
「ここに二人で来るのって久しぶりでちゅね」
「じゃあ、ウニ探しスタート!!」
「…メルちゃん、ウニは多分ここじゃとれないでちゅ」
「え?」

またしてもメルちゃんは持っていた木の棒を落としかけました。

「ウニはたしか、あの島でよく穫れるって聞きまちた」
「あの島?」

ニィナが指さしたのは、遠く離れたところにある小島です。

「え~、あんなところまで泳ぐの!?」
「メルちゃん泳ぐの苦手だったような気がしまちゅ」
「そんなことないもん!!」

プールの授業でメルちゃんだけ泳ぐのが下手っぴだったのは秘密です。

「…ニィナはいいよね、飛んで行けるもんね、うらやましいなぁ~」
「さすがにあんなところまでは飛んで行けないでちゅ」
「じゃ、じゃあどうするの?」
「えーっと…」

ニィナが困っていると、遠くから誰かが歩いてくるのに気が付きました。
二人はどきっとしました。
子供だけで海に来て怒られるのではないか…そう思ったのです。

おじさんがやってきました。
二人は緊張して黙っています。

「こんにちは、ちょっといいかな」
「は、はいぃ」

二人が揃ってそう言うとおじさんは笑いました。

「あはは、怒らないから大丈夫だよ」
「…でも、次は大人の人と来ようね」

二人はしょんぼりしています。

「よかったら名前を教えてくれるかな」
「メルはメルだよ」
「アタチはニィナでちゅ」
「ありがとう…ん?」

おじさんはメルちゃんを見つめました。
どうやら『メル』という名前に聞き覚えがあったようです。

「おじさんどうしたの、メルもう帰るからおこらないで…」
「…あ!学校の先生に言うとか!?」
「おじさん許してでちゅ!」
「あはは、そんなことしないよ」
「…メルちゃん、って言ったね」
「そうだよ?」
「もしかして…」

おじさんはお姉ちゃんのことを話しました。
すると、メルちゃんはとても驚きました。

「え!!」
「やっぱり、あのメルちゃんだね」
「じゃ、じゃあお姉ちゃんは今…」
「そうだね、さっきあの島に送って行ったところだよ」

メルちゃんは興奮気味に言いました。

「め、メルも行きたい!!」
「アタチも行きたいでちゅ」
「え?良いけど…何しに行くの?」
「ウニを探しに行くんだよ!」
「ほうほう、なるほど」
「お姉ちゃんは何しに行ってるの?」
「特に聞いてないけど…」
「ずるい!メルに隠れておいしいもの食べてるんだ!!」
「アタチも食べたいでちゅ!!」
「はいはい、じゃあ船に乗ってくれるかな」

二人は船に乗り込みました。
そよ風が吹く程度で海は荒れておらず、船に乗るには最適です。

「…お嬢ちゃん、その羽根で飛んでいけるんじゃないのかい」
「いい質問でちゅね」
「飛べると言っても少ししか飛べないのでちゅ」
「メルもね、毎日お空を飛ぶ練習してるんだよ!!」
「…お姉ちゃんが聞くと笑うから内緒で」

おじさんが笑うと、船を出しました。
二人は船に乗るのはこれが初めてです。
潮風がとても気持ち良いようで、二人は少しだけ船から身を乗り出しています。

「どうかな、初めての船は」
「ずっと乗ってたい!!」
「気持ちいいでちゅ~」

「そうかい、それはよかった」

しばらくして、島に到着しました。
近づくと意外と大きく、二人は驚いています。
人がいる気配はなく、いわゆる無人島というやつです。

「お姉さんは…あ、あそこにいるね」
「ほんとだ!!」

遠くに人影が見えます。
何をするでもなくぼーっとしているように見えます。

「んじゃ、おじさんは釣りでもしてるから」
「日暮れまでには3人で戻ってきてね」
「おじさんありがとう!!」
「ありがとうでちゅ!!」

二人はお姉ちゃんのもとに駆け寄りました。

「…あ!!」
「どうしたの二人で!?」
「…というかなんでここに居るのが分かったの」
「そ、それは…たまたまだよ」
「そうでちゅ!」
「…?」
「ま、いいか」
「お姉ちゃんは何してるの?」
「私は…たまーにこの島に来てね、ぼーっとするの」
「ぼーっと?」
「そう、何をするでもなく」
「なんでメルに言わずに来たの!!」
「そうでちゅ、メルちゃんが心配しちゃうでちゅ」
「それは…」

『メルちゃんが居ると気が散るから』と言おうとして口をつぐみました。

「ひっ、一人のほうがいいというか…」
「ふーん」

メルちゃんにじろじろ見られてお姉ちゃんはドキッとしました。

「で、二人はどうしてここに来たのかな」
「それはでちゅね、メルちゃん最初は…」
「あ、だめ!!」
「え?」

ウニを探しに森に来た、というのを聞かれたら笑われるに違いありません。
メルちゃんはお姉ちゃんに笑われるのが嫌なようです。

「…最初は?」
「なんでもないもん!!」
「…ふーん」

気を取り直したメルちゃんは持っていた木の棒を天に掲げて言いました。

「聞いて驚かないでね!!」
「はいはい…」

ニィナはニヤニヤしています。

「メルね、『伝説のウニ』を探しに来たんだよ!!」

お姉ちゃんはあっけにとられています。

「…あれ、お姉ちゃんどうしたの?」
「で、伝説のウニ…?」
「そうだよ」
「ウニぃ…この島で見たことがあるようなないような…」
「ねえねえ、どっちなの?」
「どうせ暇だし私も手伝ってあげよっかな~」
「やった!!」
「お姉さんありがとうでちゅ!!」

三人はウニが居そうな磯辺に移動しました。

「…あのさ」
「なあに?」
「メルちゃんってウニ見たことあるっけ」
「知ってるよ、真っ黒な栗みたいなやつだもん」
「お、すごいじゃん」
「『似てるから森に探しに行こ!!』とか言いそうだね」

メルちゃんはものすごくドキッとしました。
ニィナはまたしてもニヤニヤしています。

「そ…そんなこと言わないもん!!」
「…ま、そうだよね」
「でもメルちゃんこの前味噌汁飲んで『ワカメは緑だから森に生えてるんだよね?』とか言ってたよね」
「!!」

メルちゃんは顔を真っ赤にしています。
ニィナは後ろを向いて笑っています。

「はいはい、ウニ探しスタートということで」
「見つけるまで帰らないもん!!」
「アタチも手伝うでちゅ!!」
「で、メルちゃん」
「なあに?」
「『伝説のウニ』って何」
「それはね、メルの夢に出てきたウニだよ」
「なるほど?」
「どんなウニなのかな」
「それは…」

メルちゃんは夢の中でウニの話を聞いただけで、具体的にどんなウニなのか知らないのです。

「きっと金色にぴかぴか光ってるんだよ!」
「…はあ、そうですか」
「アタチは多分、おっきいウニのことだと思いまちゅ」
「ま、とりあえず探してみようかね」
「はーい!!」

水面に目を凝らすと、確かに何匹かウニが潜んでいます。
三人はメルちゃんの持っている棒を使ってウニを拾い上げてみますが、どれもこれも普通のウニです。

「んー、伝説なんてないんじゃないの?」
「そんなことないもん!!」
「だって普通のウニしか居ないよ?」
「…アタチもそんな気がしてきまちた」
「そんな…」

気がつくと夕暮れ時になっていました。
おじさんと約束した通り、日暮れまでには帰らないといけません。

「メルちゃん今日はこれまでにしようか」
「…うん」
「いつでも来れるから」
「アタチもまた手伝うでちゅ」

三人はおじさんのもとに向かいました。

「お、戻ってきたね」
「…メルちゃんどうしたの、しょんぼりして」
「…なんでもないもん」
「それよりも、姉ちゃんこれ見てよ」
「ん?どうしたんですか」

おじさんが手にしていたのは、三人が見つけたものよりも大きいビッグサイズのウニでした。
見るからに身が詰まっていて、食べたら美味しいに決まっています。

「あ!!!!」
「え、メルちゃんどうしたの」
「ねえねえ、それどうしたの!?」
「これはねぇ、釣りしてたら引っ掛かって上がってきたんだよ」
「返すのもアレだからみんなに見せてからにしようと思って」
「う、海に返すの!?」
「おじさん、それ…私達に譲ってくれませんか?」

おじさんは不思議な顔をしています。
一方の三人は興奮気味です。

「もちろん、はい…怪我しないでね」

メルちゃんはウニの入った網を持つと、喜びが込み上げてきました。

「お姉ちゃん、これ!!」
「うふふ、きっと『伝説のウニ』ってやつだね」
「メルちゃんおめでとうでちゅ~」
「やったぁ!!」

メルちゃんはぴょんぴょん飛び跳ねています。
おじさんはそれを見て思わず笑ってしまいました。

「んじゃ、暗くなる前に戻るとするかな」
「はーい!!」

四人は船に乗りました。
しばらく波に揺られると、船着き場に到着しました。

「おじさん、今日はありがとうございました」
「おじさんありがと!!」
「ありがとうでちゅ」
「はいはい、どういたしまして」

おじさんはどこか照れくさそうに言いました。

「…で、その『伝説のウニ』とやらはどうするの?」
「そういえばそうだね、メルちゃんどうするのそれ」
「…家に持って帰って飼うなんて言わないでよね」
「これは…うーん」

見つけたのはいいものの、その後のことなんて考えていなかったようです。

「食べるのはどうでちゅか?」
「だ、だめ!!」
「え、どうして?」
「伝説なのに食べちゃうの!?もったいない!!」
「そんなこと言ったって…じゃあ海に戻しちゃう?」
「それもだめ!!」

メルちゃんはどうしてもウニを手放したくないようです。

「と言ってもねえ、おじさんもウニを飼うなんて聞いたことないよ」
「やだ!!持って帰る!!」

メルちゃんが駄々をこねはじめました。
お姉ちゃんはまたか、といった表情をしています。

「メルちゃん、海に返したほうがいいと思いまちゅ」
「また会いに来てくれると思うのでちゅ」
「やだ!!!!」

その時でした。
驚くことに、ウニが光り輝きはじめたのです。
あまりの眩しさにメルちゃんは地面に落としてしまいました。

「な、なにこれ…」

伝説のウニが輝きを増していきます。
メルちゃんはこらえきれず目を閉じました。

「…ちゃん」

どこからか声が聞こえてきました。

「メルちゃん?」



「もう、メルちゃん!!」



「わぁ!!」

メルちゃんはベッドから飛び起きました。
どうやら、いつまで経っても起きてこないメルちゃんをお姉ちゃんが起こしに来たようです。
ウニが光っていたのはカーテンを思い切り開け放った光だったのでしょうか。

「うぅ、まぶじぃ…」
「いつまで寝てるの、悪いうさぎさんは嫌いだよ?」
「い、いまなんじ…?」
「もう10時だよ」
「…?」

メルちゃんはきょろきょろとあたりを見回し始めました。

「どうしたの?」
「ウニがない…」
「は?」
「ウニって海のウニのこと?」
「メル…夢を見てたのかなあ…」
「どうでもいいけどさ、今日お出かけする約束だったよね」
「…あ!!」
「もう待ちきれないからさ、私一人で行っても良い?」

「だ…」


「だめ!!!!」


メルちゃんは今日も元気です。

おしまい

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