【小説】もうひとりのメルちゃん(2/3)

前回の続きになります。




「ただいま!」
「あ、おかえり」

メルちゃんが帰ってきました。
たくさん遊んでお洋服がどろんこです。

「メルちゃんどうだった?」
「今日はね、お友達とね…」
「うんうん…あ、メルちゃんその前にお着替えしよっか」
「え」
「お洋服がどろんこだから…」
「ほんとだ!気が付かなかった…」
「元気な証拠だよ…洗うの大変だけど」
「着替えてくる!!」

メルちゃんはふと、お部屋にある鏡を見て気が付きました。
お昼寝から起きたらお耳についていたあのリボンです。

「…あれ、こんなリボン付けてたっけ」

メルちゃんは慌てて飛び出たのでリボンのことを忘れていました。

「…?」
「なんか見覚えがあるような…」

中央に綺麗な宝石のついた、真っ赤なリボンです。
メルちゃんにとっても似合っています。

「思い出せそうなんだけど…」
「…ふあぁ」
「眠くなってきた…」

メルちゃんがあくびをしたその時でした。

「…あ!」

メルちゃんはお昼寝したときに見た夢を思い出しました。

「メルに貰ったリボンだ!!」

メルちゃんはお着替えを済ませてお部屋から飛び出しました。

「ねえねえ!聞いて聞いて!」
「ど、どうしたの突然!?」
「メルね、今日ね、お昼寝してたらね…えっとね」
「うんうん」
「…メルにこのリボン貰ったの!!」
「メルって、メルちゃんのこと?」
「ちがうよ、メルだよ」
「…?」
「あのね、夢の中でメルに出会ったの!」
「もうひとりのメルちゃんってこと?」
「そう!!」
「ふーん、不思議なこともあるんだね」
「でも、お昼寝して起きたらお耳に付いてたの?」
「そうだよ」
「なんでだろうね?」
「…たしかに」

メルちゃんは急に怖くなりました。
お昼寝する前は付いていなかったのに、起きたらお耳にリボンが付いているのです。

「メルちゃん、それってもしかしておば…」
「だめ!!」
「ごめんごめん…くすっ」

メルちゃんはおばけが大の苦手です。
おばけのせいかもしれない…ふとそう思ってしまいました。

「ねえねえ、違うよね??」

メルちゃんは今にも泣きそうな目をしています。

「そうだね、きっと妖精さんのしわざだね」
「よ、妖精さん…」
「妖精さんなら怖くないよね」
「…うん」

どうやらメルちゃんは安心したようです。
よほどおばけが嫌いなようです。

「…メルおなかすいた」
「もうこんな時間だね…ご飯食べよっか?」
「うん!!」
「今日のご飯はね…メルちゃんの大好きなオムライスだよ」
「やった!!」
「じゃ、待っててね」
「わかった!!」

その日の夜です。

「メル眠くなってきた…」
「いい子はおねんねしようね」
「おやすみなさい…」
「はい、おやすみなさい」

布団に入りましたが、どうも眠れません。
メルちゃんはあの夢のことを考えてしまいます。
そして、お耳に付いていた赤いリボンのことも。

「…リボン」
「妖精さんがくれたのかな」
「あのメルは妖精さんだったの?」
「また会いたいな」
「今日、出会えるといいな」
「出会えるといいな…であえると…」
「…」

気がつくと、メルちゃんは森の中にいました。
お昼寝したときに見た、あの森の中です。
お花畑が広がる中、たくさんの蝶々が舞っています。

「…あ!!」

メルちゃんは興奮して叫びました。

「め、メルちゃんはどこ?」
「メルちゃーん!!でてきて!!」

メルちゃんはもうひとりのメルちゃんを探しました。
けれども、どこを探しても見つかりません。
かくれんぼをして隠れた場所、一緒にお昼寝した場所、お別れして大泣きした場所…
どこを探しても、メルちゃんの姿は見当たりません。

「今日はいないのかなぁ」
「また会いたいのに…」

メルちゃんは探すのを諦めてしまいました。
切り株に座って休憩です。

「うーん」
「あれはメルだったよね」
「メルがいたんだもん」
「もしかして、妹がいるのかな?」

考えるたびに、ますます謎に包まれていきます。

「…ちゃん」
「え?」

聞き覚えのある声がしました。

「め、メルちゃん!?」
「出てきて!!おねがい!!」

メルちゃんは叫びました。

「どこにいるの!?」

その時でした。

「メルちゃん!!」
「わ!!」

メルちゃんは飛び起きました。

「もう、いつまで寝てるの?」
「…というか、すごい汗だね」
「あれ、メル…」
「ん?どうしたの」

メルちゃんはさっきまで見ていた夢のことを話しました。

「その、もうひとりのメルちゃんって子は今日はいなかったんだね」
「うん…」
「そっか」
「どうしたのかな、心配だなぁ、大丈夫かなぁ…」
「きっと大丈夫だよ」
「そ、そう…?」
「それより、もうひとりのメルちゃんに貰ったリボンはどうしたのかな」
「…あ!!」

メルちゃんは布団から飛び起きて、リボンコレクションの箱を持ってきました。
箱には「メルのりぼんこれくしょん」と書いてあります。
箱を開けると、そこには真っ赤なリボンが入っていました。
真ん中に綺麗な宝石の付いた、あのリボンです。

「…あった!!」
「よかったね…うふふ」
「うん!!」

メルちゃんは満面の笑みで返しました。

「…で、もうこんな時間だけど」
「今日はお出かけするんだったよね」
「あ」
「メルちゃん置いて行っちゃうぞ~?」
「だ、だめ!!」
「くすっ、冗談だよ…はやく準備してね」
「行ったらだめだからね!!」
「はいはい、待ってまーす」
「どのリボンがいいかな?」

自慢のリボンコレクションを漁って呟きました。

「やっぱり、これかな」

メルちゃんは嬉しそうに、夢に出てきた真っ赤なリボンを付けました。

「お出かけお出かけ…るんるん」

リボンに付いた宝石に陽が差して、きらっと光りました。



Part3に続く

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